第2言語獲得研究の背景となる考え方

今、Vivian Cookという人が書いた “Second Language Learning and Language Teaching” という本を読んでいる。
第2言語獲得(SLA)研究に関する本格的な本を読むのは初めてなので、読んでいて心に残ったことを書き留めていきたい。
英語を教えている先生向けに書かれた本だが、英語を学習している方にも役に立つのではないかと思う。

SLA研究の背景にある考え方について述べてあったので、今回はそれを書き留めておきたい。


第2言語獲得研究は外国語教育とは独立している

第2言語獲得研究(SLA研究)というと、どうしても、「どのように英語を教えるといちばんよい結果が得られるのか?」という問いに対する答えが得られると期待してしまうけど、必ずしも両者は直接つながっていない。

SLA研究は、飽くまで、「第2言語の獲得はどのように行われるか?」ということを調べるのであって、そこでの発見から得られた知見を外国語教育に利用するのはよい。ただ、「外国語を教えるのに、この方法がよいか、あの方法がよいか?」という問いは、現在、「教室で行われていることが正しいかどうか?」ということを問うているだけ。本来は、「教室では何をすればいいのか?」という本質的な問いをするべきだ、ということらしい。

第2言語獲得は第1言語獲得とは独立している

よく、「赤ちゃんは大人をまねて母国語を話せるようになるのだから、外国語の学習もネイティブスピーカーをまねるのがよい」などという理屈を聞くときがあるが、第2言語獲得は第1言語獲得と同じよう行われるという保証はない。もちろん、似ている部分もあるかもしれないが、それは検証が必要なことで、当然似ているとは言えない。

第2言語学習は第1言語を移転させるだけではない

(ちょっとここは言っていることが難しい。もう少しよく理解したら書き直します。)よく、第2言語で間違いを犯すのは、第1言語からの転移によるものだと言われるときがある。例えば、「スペイン語は主語代名詞を省略するのでスペイン語話者は英語を話すとき It is raining.というべきところ、Is raining. と言ってしまう」などと言われる。たしかに、第1言語から第2言語への転移は重要ではあるが、第2言語でうまくいかないことは必ずしも第1言語のせいとは限らない。本当にそうかどうかはしっかり検証すべき。

学習者は自分独自の独立した言語体系を持っている。

ここが一番印象に残った部分。第2言語学習者は、ネイティブの目から見て間違った文を発することがある。例えば、I am not going to school.の意味で、Me go no school.というなど。それを単に「間違っている」というのは、その人を第2言語のネイティブの基準で判断している。学習者はネイティブではないのだから、ネイティブの基準で判断すべきでなく、その学習者に適した基準で判断すべき。

この学習者は、わざとこんな間違いを犯しているのではなく、自分なりに第2言語の言語体系を構成しようとしている。その意味で、この言語はそれなりの言語体系を持っている。これを、「中間言語 (interlanguage)」という。学習者がどのように学習するかを知るということは、この学習者が自分で作りあげている興味深いルールや構造を知ることから始まる。


最後の4.についてが特に興味深かった。教育者の観点からすると、学習者が間違いを犯したからと言って、直ちにその間違いを訂正しようとするのではなく、学習者が頭の中でどのような言語構造を作り上げているのかを、興味を持って知ることがまず大切、と言っているように思う。

学習者の観点からすると、英語を話したときにたとえ間違いを犯したとしても、それはその学習段階においては当然犯す間違い。現在自分は自分なりの「中間言語」を構築している段階であり、その段階を経れば、そのような間違いを犯さなくなる可能性が高いので、落胆する必要はない、と考えればいいと思う。

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