音声の研究には、音声学と音韻論がある
言語学を学ぶとすぐ教わるのですが、言語の音声の研究には、「音声学」(phonetics)と「音韻論」(phonology)があります。
音声学は、言語の音声がどのように発音されるかを細かく調べる研究。
音韻論は、その言語で、どのような音が意味の区別に役立っているかを調べる研究です。
音声学の場合、音声を詳しく調べていくわけですから、いくらでも詳しく調べることができ、ある意味、切りがない研究とも言えます。
一方、音韻論は、どのような音の区別が意味の区別に役立っているかを調べるのが目標なので、それが分かった時点で一応、研究には一旦切りがつきます(もちろん、それをさらに詳しく研究していくことはできるわけですが)。
「音素」を区別して話せるようになればいい
音韻論では、どのような音の差が意味の区別に役立つかがわかったら、それを「音素」という単位でまとめます。
例えば、日本人には同じ「ラ行」音のように聞こえてしまう音でも、英語では、right[rait](右、正しい)とlight[lait](光)は意味が違います。したがって、英語においては、[r]と[l]は、別々の音素である、ということになります。音素であることを示す場合は、/r/ /l/のように斜線で囲む場合が多いです。このようにして、その言語にはどのような音素があるかを調べ、それをその言語の「音素表」にまとめます。
日本人が英語の発音を学ぶ場合、なにも、音声学的にアメリカ人やイギリス人と全く同じように聞こえるようになる必要はないと思います。要は、意味の区別に影響する音声の区別、つまり音韻論的な音素の区別だけ覚えればいいということです。
上記の例でいえば、/r/と/l/が英語では別の音素であることを理解し、ネイティブスピーカーにもわかるように区別して発音できることまで学習すればいい、ということです。
つまり日本人にとっての英語の発音の学習は、無限に続く学習でなく、ある程度の終着点のある学習なので、そこまで頑張って学習すればよい、ということです。(もちろん、自分の[r]や[l]の発音を、音声学的に更にネイティブスピーカーに近づけたいという方は、それに向けて頑張っていいと思います。)